商業用木材について
用途、特性、日本の木材から世界の木材まで
商業用木材は、建築、家具、楽器、船舶、スポーツ用品、美術工芸など、様々な産業で利用され、私たちの生活を支えています。その種類は、針葉樹から広葉樹、また、特定の地域で生育する特別な木材まで多岐にわたります。それぞれが独自の特性と美しさ、そして歴史的背景を持っています。この記事では、商業用木材の種類について、日本の代表的な木材から世界的に評価の高い木材まで、幅広くご紹介していきます。
日本の商業用木材
伝統的な利用と多様性
日本の森林は、豊かな降水量と温暖な気候に恵まれ、国土の多くを森林が占めています。古くから木と共に生きてきた日本の文化の中で、様々な樹種が独自の用途を開拓し、日本の産業を支えてきました。商業用木材としても、古くからスギやヒノキなどの針葉樹が建築材として利用されてきたほか、様々な広葉樹も用途に合わせて使われてきました。
スギ
日本の建築文化を支える木材
スギは、日本を代表する針葉樹で、その利用範囲の広さから様々な用途に使われています。まっすぐな木目と柔らかさが特徴で、建築物の構造材や内装材として広く利用されています。特に、秋田スギ、吉野スギ、屋久杉などは、地域ブランドとして知られ、その品質の高さから様々な用途に使われています。スギは加工がしやすいことから、酒樽、家具、建具、桶、経木など、多岐にわたる用途にも利用されてきました。屋久杉のように、特殊な環境で育ったスギは、樹脂分が多く、腐りにくいという特徴もあります。
ヒノキ
香りと美しさを兼ね備えた木材
ヒノキは、美しい光沢と芳醇な香りが特徴の針葉樹です。耐久性、耐水性、抗菌性に優れ、古くから建築材、社寺建築、神棚、浴槽、家具材として使われています。尾鷲ヒノキ、木曽ヒノキ、東濃ヒノキなどは、伊勢神宮の式年遷宮の用材として使われるなど、良い品質の木材として知られています。また、ヒノキに含まれる成分には、アロマテラピー効果や防虫効果があることも知られています。
その他
針葉樹
様々な個性
- コウヤマキ
スギ科の針葉樹で、ヒノキチオールという成分を含んでおり、防腐性、耐水性に優れています。風呂桶や水回り、特殊な建築物の部材などに使われてきました。 - サワラ
ヒノキ科の針葉樹で、柔らかく、加工がしやすいのが特徴です。曲げわっぱや桶など、木工品に使われます。 - ツガ
マツ科の針葉樹で、加工がしやすく、建築材や梱包材などに使われます。 - モミ
マツ科の針葉樹で、クリスマスの装飾に使われることで知られていますが、建築材や家具材としても利用されます。
広葉樹
多様な用途
- ケヤキ
硬く、木目が美しい広葉樹。耐摩耗性、耐久性に優れており、古くから寺社建築の柱、梁、大黒柱、家具、建具、臼、杵などに使われてきました。特に、東北地方のケヤキは有名です。 - ナラ(ミズナラ、コナラ)
硬く重い広葉樹で、強度と耐久性に優れています。家具、フローリング、ウイスキー樽の材料として使われるのは一般的ですが、シイタケの原木としても使われます。 - カバ(ミズメ、シラカバ)
きめ細かく滑らかな木肌が特徴の広葉樹。家具、フローリング、楽器、合板など、様々な用途に使われます。ミズメは、緻密で均一な組織を持つことから、将棋の駒などの材料としても使われます。 - クリ
耐湿性、耐久性に優れた広葉樹で、古くから建築物の土台、枕木、家具、船舶の材料などに使われてきました。
広葉樹の多様性
- エンジュ
マメ科の広葉樹で、硬く、耐久性に優れています。家の柱、床柱、家具、彫刻、将棋の駒などに使われてきました。 - トチ
大木になり、木目が美しい広葉樹です。家具、楽器、建具、彫刻など、幅広い用途に使われます。特に、杢(もく)と呼ばれる木目の部分は珍重されます。 - ホオノキ
モクレン科の広葉樹で、軽く、加工がしやすいのが特徴です。朴葉寿司で使われる葉は、この木です。また、木刀や版画の版木にも使われます。 - セン
ウコギ科の広葉樹で、木目が美しく、加工もしやすいことから、家具、建具、器具材などに使われます。
地域の特色
木材の特徴
- 屋久杉
鹿児島県の屋久島に生育するスギで、樹齢千年を超えるものもあります。厳しい自然環境の中でゆっくりと育つため、緻密で樹脂分が多く、腐りにくいという特徴があります。複雑で力強い木目は、工芸品、美術品、建築材として使われています。 - 神代杉
火山灰の中に埋もれていたスギで、数百年から数千年の時を経ています。独特の灰色がかった色合いは、火山灰に含まれる成分が化学変化を起こしたことによるもので、建築物の内装材、家具材、美術品として利用されます。 - 秋田杉
秋田県に生育するスギで、厳しい冬を乗り越えてゆっくりと成長するため、木目が均一で、美しい光沢を持っているのが特徴です。 - 吉野杉
奈良県の吉野地方で育つスギで、まっすぐな木目と強度、耐久性の高さが特徴です。
世界の商業用木材
多様な環境と個性
世界の森林は、気候や土壌、地形などの環境の違いから、多様な樹種が育っています。商業用木材としても、様々な地域の木材が利用され、世界各地の文化や産業を彩ってきました。
熱帯の木材
- チーク
東南アジアに生育する広葉樹で、「木の宝石」とも呼ばれています。耐久性、耐水性、防虫性に優れ、収縮率が小さく、狂いが少ないことから、船舶、家具、建築材として利用されてきました。チークオイルを含むため、独特の光沢と香りがあります。ミャンマーチークは、特に有名で良い品質として知られています。 - マホガニー
中南米、カリブ海地域に生育する広葉樹で、美しい光沢、赤みがかった色合い、加工のしやすさが特徴です。家具、楽器(ギターなど)、内装材、彫刻、船舶の内装などに利用されています。 - ウォールナット
北米、特にアメリカ東部やカナダ南部に生育する広葉樹です。重厚感のある濃い茶色、美しい木目、加工のしやすさが特徴で、家具、内装材、楽器(ピアノ、ギターなど)、銃床などに利用されています。 - ローズウッド(紫檀、紅木)
熱帯各地に生育する広葉樹の総称。比重が大きく、硬く、緻密な木材で、美しい色合いと香りが特徴です。家具、楽器(バイオリンの指板、チェスの駒など)、装飾品、彫刻などに利用されてきました。
その他熱帯の木材
- エボニー(黒檀)
カキノキ科の広葉樹で、硬く、緻密で、黒色に近い色合いが特徴です。楽器(ピアノの黒鍵、バイオリンの指板など)、彫刻、チェス駒、ナイフの柄などに利用されます。アフリカ産のエボニーが特に有名です。 - コクタン
熱帯各地に生育するカキノキ属の広葉樹。比重が大きく、硬く、緻密で、黒色をしています。唐木細工、象嵌、仏具、刀の柄などに使われます。 - ウェンジ
アフリカに生育するマメ科の広葉樹。暗褐色に黒い縞模様が入るのが特徴です。強度が高く、耐久性にも優れるため、フローリングや家具の材料として使われます。
針葉樹
- ダグラスファー
北米、特にアメリカ西海岸からカナダに生育する針葉樹で、強度、耐久性、寸法安定性に優れています。建築物の構造材(柱、梁、根太など)、内装材として利用されています。 - イエローパイン
北米、特にアメリカ南東部に生育する針葉樹で、比較的柔らかく、加工がしやすく、明るい色合いが特徴です。建築物の内装材、家具材として利用されています。 - ポンデローサパイン
北米に生育するマツ科の針葉樹です。加工がしやすく、家具や建築の内装材として広く利用されています。 - スプルース
マツ科の針葉樹です。ジャーマンスプルースやシトカスプルースなどの種類があり、音響特性に優れていることから、バイオリン、ピアノ、ギターなどの楽器の材料として利用されます。
その他世界の木材
- ブビンガ
アフリカに生育するマメ科の広葉樹。赤みがかった褐色で、重厚感のある木目が特徴です。家具や楽器に使用されます。 - ゼブラウッド
アフリカに生育する広葉樹。名前の通り、縞模様が特徴的な木材で、装飾、化粧板、家具に使用されます。 - ココボロ
中南米、特にメキシコに生育するマメ科の広葉樹。赤、黄、黒など複雑な色合いの木目を持つのが特徴です。ナイフの柄やビリヤードのキューなどの装飾に用いられます。
木材選びについて
用途、特性、物語を知る
商業用木材を選ぶ際には、用途、特性、そして木材が持つ物語を理解することが大切です。建築物の構造材には、強度、耐久性、寸法安定性に優れた針葉樹が適しています。家具や内装材には、美しい木目や色合いを持つ広葉樹が適しています。また、屋外で使用する場合には、耐久性、耐水性に優れたチークなどが適しています。
さらに、木材の生産地、歴史的背景、文化的な意味合いなどを知ることで、木材選びはより豊かなものになります。例えば、屋久杉を選ぶ際には、その生育環境や歴史を知り、チークを選ぶ際には、その持続可能な利用について考えることが良いでしょう。